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【Anycubic Photon Mono 4Kレビュー】光造形と積層式の3Dプリンタ比較
今まで積層式の3Dプリンタだけを使ってきましたが、ついに光造形の3Dプリンタ『Anycubic Photon Mono 4K』を導入しました。
だいぶ使い慣れてきたので、レビューを書いてみます。
「すでに積層式を持っているけど、光造形にも興味がある」
「積層式(FDM)と光造形(SLA)、そんなに違うもの?」
と思っている方、ぜひ参考にしてみて下さい。
目次
良い点:造形が圧倒的にキレイ
画像を見ての通り、光造形の方が圧倒的にキレイです。
カーブしているところは少し積層跡が残っていますが、平面はツルツル。
積層跡が残っているところは1000番の紙やすりで軽く削って、キレイに消すことができました↓
積層式の場合だと、こうはいきません。
やすりがけをしても、積層跡を完全に消すことは難しいです。
積層が欠けているところは、どこまで削っても跡が残ります。
また、ヤスリがけした部分が白くなってしまいます(おそらくキズ、黒いフィラメントに問題がある可能性が高い)
よって、パテ埋めでもしない限りツルツルな平面にすることはできません。
実際、積層跡を消すまでにかなり深く削る必要があります(途中で心が折れたので、画像には大きな積層跡が残っています)
光造形と同じように1000番の紙やすりで仕上げても、積層式の造形物はこんな仕上がりです↓
悪い点:洗浄・二次硬化が面倒
積層式の場合は、プリントが終わったらすぐに使用できます。
ところが造形式はそうはいきません。
プリント完了後に、洗浄・二次硬化という作業が必要です。
1.洗浄
造形物に付着しているレジン液の残りを洗い落とす作業です。
レジンには「毒性」があります。
皮膚に付くと、かぶれたりする場合があるので、ぬめりが無くなるまでブラシ等でこすり落とします。
また、小さな隙間にのこったままのレジンを、二次硬化で固まらせてしまわないための対策です。
2.二次硬化
3Dプリンタだけでは、100%の硬化はできていません。
別売りのUVライトを使用して、硬化のサポートが必要です。
硬化する時間は「5分」くらい。
表面がベタベタしなくなればOKです。
準備・後片付けについて
ちなみに光造形は「準備や後片付けも大変だ」と良く言われます。
その理由は、レジン液の処理。
準備はレジン液をタンクに投入するだけでいいのですが、問題は後片付け。
- タンク内のレジン液をろ過してゴミを取り除く
- アルコールを使って、タンクを掃除する(ゴム手袋着用)
この後片付けに、30分くらいの時間を要します。
なお、めんどくさがり屋の私は、この準備・後片付けを全くやりません。
常にタンクの中にレジンを入れっぱなしです。
もし印刷して何か品質に悪影響が出れば、ろ過して「もう一度やり直せばいいや」という感じです。
黄色いケースがUVをカットしてくれているので、タンクの中にあるレジンが固まったりもしません。
今のところ、何も問題は起きていませんよ。
臭いについて
レジン液は、鼻にツンと来るような異臭がします。
ただし、レジン液によってその臭いの強さは全く違います。
私が現在使用している水洗いレジンは、それほど臭いは強くありません。
印刷中も臭くないです。
Kexcelled 3D プリンター用 水洗い可能 レジン – Amazon
唯一、印刷が終わったあと、ふたを開けたときはさすがに臭います。
でも、吐気がしたり気持ち悪くなるような臭さではなくて、「くせぇな」って思うぐらいです。
ちなみに、この『Photon Mono 4K』は、USBメモリに書き込んでデータのやりとりを行います(USBケーブルを接続してデータ通信はできない&Wi-Fi非対応)
もし、臭いが気になるようであれば、窓際やトイレなど、換気の良い場所に設置しておくことも可能です。
『Anycubic Photon Mono 4K』の総評
光造形の面倒さは。事前に調べておいた通りだったので、それほど苦じゃなかったです。
「やっぱり、ちょっと手間がかかるなぁ」という感じ。
しかし、造形のキレイさには本当に驚いた。
これなら製品として売り出しても、全く恥ずかしくありません。
実は、今まで積層式の3Dプリンタで作った製品を販売することに、少し引け目を感じていたんです。
だって、積層跡が残っているから。
一般的に売られている製品よりも見た目が悪いです。
だから、商品説明には「3Dプリンタで自作したものです」というコメントを書いていました。
でも、「3Dプリンタで作った」なんて説明、本当はいらないはずです。
購入するお客さんからすれば、「どうやって作ったか?」なんて関係ありませんから。
私の心の奥に「3Dプリンタで自作したものだから、普通の製品よりは見た目は劣るよ。勘弁してね」という気持ちがあったんだと思います。
でも、これからは正々堂々と販売できます。
「3Dプリンタで作ったものだから、多少品質は落ちるよ」ではなく、「3Dプリンタで作った一点モノだよ」ってね。
ちなみに、気になったこと2点ほど思い出しました。
セットアップ&組立説明書が中国語と英語のみ
別に読めなくても写真だけで分からなくはないのですが、心配性な私はちょっと嫌でした。
一つ一つカメラで撮影して、Googleさんに翻訳しながらセットアップを行いました。
※日本語訳したものを記事にしました↓
【Anycubic Photon Mono 4K】 組立・セットアップ説明書(日本語翻訳版)
データの移行はUSBメモリのみ
作成した3Dデータは、パソコンでUSBメモリに書き込み、それを引き抜いて3Dプリンタに差し込み、データを読み込みます。
USBケーブル接続やWi-Fi接続はできません。
毎回USBメモリを抜き差ししないといけないので、面倒は面倒です。
でも、Wi-Fi接続できる装置ってトラブルが多いんですよね。
通信が不安定になって、うまくデータ転送できなかったり、転送スピードが遅かったり・・・
そんなときに、解決のためにムダに時間を取られるときの事を考えると、「まぁ、別になくても良いかなぁ」という感じです。
USBメモリ式なら、ネットの電波も気にせず、好きな場所に置いて置けるので、これはこれで良かったです。
ちなみに、印刷中は常にUSBメモリからデータを読み込んでいる感じで、ずっとUSBメモリのランプが点滅しています。
だから、もしかするとUSBメモリの消耗は激しいかもしれません。
光造形3Dプリンタの導入に最低限必要なもの&総費用
光造形3Dプリントを行うために最低限必要な道具一式です。
掛かった総費用は『34,019円』でした(※私が購入したときの値段です)
- Anycubic Photon Mono 4K ・・・ 27,999円
- 水洗いレジン ・・・ 2,659円
- 二次硬化用UVライト ・・・ 2,069円
- 洗浄液 ・・・ 1,292円
※画像に映っている2つのスクレーパーは、3Dプリンタ本体に付属していたものです。
この他にも、超音波洗浄機や細いカーボンスクレーパーなど、あったら便利なものが色々ありますが、必要だと感じたときに後々追加していくのがオススメです。
他の方が「一緒に買っておいた方が良い」と紹介してくれたけど、実際に買ってみたら使わなかったものとか結構あります。
3Dプリンタ本体:Anycubic Photon Mono 4K
Anycubic Photon Mono 4K – Amazon
実は、2022年4月にこの後継機となる「ANYCUBIC Photon M3」が発売されています↓
値段は「39,999円」
Photon Mono 4Kと比べると、その差「12,000円」
大きな違いは、以下の通り↓
- 印刷サイズ:132 × 80 × 165mm → 163 × 102 × 180(mm)
- 印刷解像度:3840 × 2400 → 4098 × 2560(px)
「この程度なら、私の用途であれば旧型でも十分だ」ということで、私は『Photon Mono 4K』の方を購入しました。
サイズもコンパクトだし、値段も安いですからね。
ちなみに「もう少し安くなったりしないかな?」と思って、Amazonのタイムセール祭まで待ってみましたが、どちら値下がりすることはなかったです。
レジン液:Kexcelled 水洗いレジン
Kexcelled 3D プリンター用 水洗い可能 レジン – Amazon
光造形3Dプリンタは、このレジン液が固まってプラスチックを形成します。
大きな造形を作る場合は、その分、このレジンが必要となります。
レジンには色々な種類があります。
- 強度の強いタイプ
- 透明なタイプ
- 弾力のあるタイプ
などなど。
しかし、特殊なレジンは印刷後にアルコール洗浄が必要なため、手間も多いです。
一番最初は、水洗いできるスタンダードなレジンを使ってみるのが良いでしょう。
ただし、水洗いレジンは通常のレジンよりも値段が若干高いです。
とはいえ、通常レジンは「水」ではなく、「アルコール」で洗浄する必要があります。
アルコール代を考えると、それほど値段は変わらないと思っています。
なお、私が使用しているこの水洗いレジンは臭いも少ないです。
もし私と同じように強い匂いを嗅いでしまうと、頭が痛くなってしまうような方は、コチラのレジンがオススメです。
二次硬化用UVライト:Creality 硬化ライト
3Dプリンタでは不完全だった硬化を、100%硬化するためのUVライトです。
私は最初の頃、百均に売ってるUVライトで試してみましたが、
- 出力が弱くて硬化が遅い
- 当たる範囲が狭いから、数分置きに当てる場所を変える必要がある
- すぐに電池がなくなって、交換が面倒
といった不満が盛りだくさんだったので、すぐにこのきちんとしたUVライトに買い替えることとなりました。
洗浄液:健栄製薬 無水エタノール
無水エタノールは、濃度の濃いアルコールです。
- レジンタンク(めったに洗わない)の洗浄
- レジンが付いたスクレーパー(土台から造形物を取り出すための工具)の洗浄
- 手に付いたレジンを洗い落とすとき
が、主な用途です。
いつも使うのは「水洗いレジン」なので、別に水道水で洗い落とすことはできます。
ただ、なんとなく気分的にと言うか、一応レジンも有害なので、しっかり薬品で落としたいのです。
もし、いつも使ってる消毒液が手元にあれば、それでも十分です。
ちなみに、3Dプリンタ用の洗浄液として多くの方は『IPA』の方をオススメしています。
IPAは有害性があります。
値段は安い(無水エタノールの約半額)ですが、IPAを使用する際は、あまり吸い込まないように十分ご注意ください。
積層式と光造形、両方揃えれば『最強』
『光造形』と『積層式』、結局どちらが良いのか?
上記の表を見てもらえば分かる通り、どちらも一長一短です。
結論とすれば、『両方揃えるのが、最強』です。
- プロトタイプ → 積層式で試作
- 最終モデル → 光造形で生産
という使い分けができます。
試作段階では、印刷して修正を何度も繰り返すことになるので、洗浄や二次硬化の不要な『積層式』が便利です。
「もうこれ以上修正はない」という最終モデルが完成したら、積層跡のないキレイに仕上げられる『光造形』を使い、製品として印刷を行います。
同じデータで『積層式』と『光造形』どちらでも印刷可能
ちなみに、3Dデータは『積層式』と『光造形』で互換性があります。
例えば、フリーの3D CAD『Fusion360』で作成した3Dデータを「.stl」ファイルで保存。
それぞれの3Dプリンタのスライスソフト(各3Dプリンタ本体ごとに用意されたデータ変換&印刷ソフト)を通して、同じデータを使った印刷が可能です。
3Dプリンタで作ったもの紹介
最後に、私が過去に3Dプリンタ(光造形&積層式)で作ったものを紹介します。
- 大きいペットボトル対応ドリンクホルダー
- ドリルの刃インナーケース
- 食洗器の給水タンクアタッチメント
- 掃除不要の電動歯ブラシホルダー
- シェーバーの水漏れを守るスタンド
- イレクターアタッチメント
- イレクターパイプ用インナー
- 細いパイプで繋ぐためのアタッチメント
- スリッパ用ハンガー吊り下げパーツ
- デジタル時計置き場
- 入浴剤の泡でおもちゃを進めるパーツ
- スピーカースタンド
- キャスターストッパー
- 釣り具
- ルアー
- 収納ラック
- ケース内の仕切り
大きいペットボトル対応ドリンクホルダー
積層式で作成↓
光造形で作成↓
ドリルの刃インナーケース
食洗器の給水タンクアタッチメント
食器洗い乾燥機 NP-TSK1(Panasonic)に水道から給水するためのアタッチメント
⇒ 動画