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電子工作で自作したものを販売するときは「PSEマーク」が必要なのか?
電子工作で作ったものをブログにアップしていると、たまに「売ってほしい!」と言われることがあります。
しかし、「自作した電気製品を販売して法律的に問題ないのか?」気になったので調べてみました。
目次
電子工作に関わりが深い2つの法律
PSEマーク以外にも「技適マーク」という電子工作に関わりの深い法律があるので、まずはこの2つの法律の概要について。
電波法(技適マーク)
電波法は、日本国内で使用する電子機器の電波について定められた法律です。
技適マークの付いていない違反無線機を使用すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
電気用品安全法(PSEマーク)
電気用品安全法は、電気用品の安全基準を定めた法律です。
PSEマークの貼られていない違反製品を販売した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
Wi-FiやBluetoothといった無線を使う場合は「技適マーク」が必要
販売したい電子工作品が無線を使用する場合、搭載したマイコン(Arduino・Raspberry Pi・ESP32など)に技適マークが付いている必要があります。
ただし、赤外線リモコンやトランシーバーなどの微弱無線は、電波法が適用されません(技適マーク不要)
「PSEマーク」が必要なもの
PSEマークが必要なものは下記の2つに分類され、それぞれ品目が掲載されています。
しかし、この品目表だけで判断しないでください。
電子工作品であれば、PSEマークに該当しない可能性が高いです。
PSEマークは、
- コンセントに挿して使うもの(AC100Vを供給されて使用する機器)
- リチウムイオン電池
に必要です。
PSEマークが必要な例
例えば、「パソコン」
これには、PSEマークが必要でしょうか?必要ないでしょうか?
実は、パソコンにPSEマークは必要ありません。
しかし、パソコンに付属しているACアダプターにはPSEマークが必要となります。
スマートフォンも同じです。
スマホ本体にはPSEマークは必要ありませんが、充電ケーブルと内蔵されたバッテリー(リチウムイオン電池)にはPSEマークが必要です。
ちなみに、はんだごてはコンセントに挿すケーブルが本体に直接繋がっているので、PSEマークが必要です。
基本的にDCを扱うことが多い電子工作ではPSEマークは不要ということになります。
コンセントから電源を取る場合は、PSEマークが付いているACアダプターを選択すればOKです。
また、乾電池やボタン電池は「PSEマーク対象外」となっているので、電池で稼働する電子工作品はPSEマークは不要です。
もし、自分が売ろうとしている電子工作品がPSEマークの対象となるか判断できない場合には、世の中の似たような製品にPSEマークが付いているか確認してみるのが良いかと思います。
「個人売買」ならPSEマークは不要
電気用品安全法の対象となるのは、電気製品を販売する「事業者」です。
よって「個人」は対象外です。
例えば、とある会社から「あなたの電子工作品を売ってくれ」と頼まれたとします。
もし、その電子工作品がPSEマークの対象品目になっていたとしても、あなたが「個人」として販売するのであれば、電気用品安全法は関係ないので、PSEマークを気にする必要はありません。
ただし、あなたから電子工作品を買い取った会社は「事業者」ですから、PSEマークを表示せずに、買い取った電子工作品を他の方に(個人でも法人でも)販売することはできません。
なお、個人売買であっても「少数」かつ「単発」での販売がPSEマーク不要の条件です。
オークションやフリマサイトで継続的に販売したり、たくさんの数を納品する場合は、「個人」ではなく「事業者」として認定される可能性があります。
※個人事業主は「事業者」扱いです。
「事業者」は経済産業局に届出が必要
勘違いしやすいのですが、PSEマークは国や機関などに認証してもらって、得られるものではありません。
電気用品安全法を遵守している証として、事業者本人が表示するものです。
しかし、電気用品安全法を守っていないのにPSEマークを表示してしまえば、もちろん違法となり、罰則が科せられます。
では、電気用品安全法では何をする必要があるのか?
- 事業の届出
電気用品の製造・輸入を行う事業者は、開始日から30日以内に経済産業局に届け出ること - 技術基準適合義務/自主検査
事業者は、届出に係る電気用品について、省令で定める技術基準に適合するようにしなければならない。また、自ら製品検査を行い、その記録を保存しなければならない。 - 適合性検査(※特定電気用品のみ)
販売までに、製造工場が基準に適合する製品を製造・検査できることについて、登録検査機関の検査を受け、その適合証明書を保存しなければならない。
上記3項目を満たすと、ようやくPSEマークを貼る権利が与えられます。
『特定電気用品』に必要な適合性検査について
特定電気用品の場合、PSEマークを貼る為には『適合性検査』が必要です。
適合性検査は産業経済省指定の登録検査機関で受けることができます。
検査費用は品目によって違います。
適合性検査に掛かる費用例
【試験手数料】
- 変圧器・安定器 ・・・ 約30万円
- 電熱器具(電気便座・サウナバス等) ・・・ 約30万円
- 電動力応用機械器具(冷凍用のショーケース・自動販売機等) ・・・ 約80万円
- 電子応用機械器具(高周波脱毛器等) ・・・ 約50万円
- 交流用電気機械器具(磁気治療器等) ・・・ 約50万円
【その他の手数料】
- 検査設備確認・・・ 約9万円
- 発行手数料・・・ 約15,000円
「無料譲渡」でもPSEマークが必要
電気用品安全法では、販売を「所有権を移転する行為」と定めています。
例えば、プレゼントでも粗品でも景品でも、事業者が他人に譲れば「販売」とみなされるわけです。
よって無料であっても、電気用品安全法に該当する製品には、PSEマークの表示が必要です。
まとめ
ほとんどの電子工作品は、電気用品安全法やPSEマークに該当はしないでしょう。
ただし、電子工作品に使用するマイコンやACDCアダプタなどは、正規の技適マーク・PSEマークが付いていることを確認する必要があります。
もし販売目的で電子工作品を作る場合は、アリエクやAmazonの怪しい安価な部品の使用は控えた方が安全です。